シュガー&スパイス



うわ……。
あたし……。



見えたその顔は、どう見ても真っ赤。

しかも、今にも泣き出しそうな顔をしていた。



「ぁ……あのね!……あ、あたし、もう結婚、も、申し込まれてるんだから!
だから……だから、その。
こんなふうにされると、迷惑なんだよね。
あたしをお客と一緒にしてもらっちゃ困るんですけどッ!

……はあッ……はあッ……」


「…………」



最後の方は、もう何が何だかわからなくて。
ほとんど勢いに任せて言ってしまった。

一気に言ったもんだから、苦しくて、思わず胸に手を置いたあたしは、そこでハッとした。


目の前の、千秋のその表情に……。



って……やだー!
なんでそんなキョトンとしてるの?

まさに、固まってます。って顔!


大きな目をさらに見開いて、千秋は何度も瞬きを繰り返した。


そして。



「ああ……だよな。ごめん」



そう言って、髪をクシャリと持ち上げると、元いた席に腰を落とした。
あっけなく離れた距離。


ちょ……っと、言いすぎたかな。
千秋の仕事の事を出すのは、フェアじゃなかったかもしれない。


バツが悪くて、さっきとは違う沈黙がこの狭い空間を包む。


それから、観覧車が地上に降りるまで、あたしと千秋の足が触れることはなかった。