って!

こんな事してる場合じゃなかった!
急がなきゃ、英司を待たせちゃうッ!


あたしはベッドから飛び降りると、着ていたTシャツを床へ放り投げた。




洗剤の香りのするシャツに腕を通して、トーストをかじる。
髪をしっかりと結い上げて、人並みに化粧をした。


いつもの朝。
いつも、こんな風にあたしの朝は慌しい。


……こんなんで、結婚して大丈夫かな。

英司に呆れられないように、いい女でいなくちゃ。
完璧な奥さんになるんだ。
英司の隣にいても、恥ずかしくないような……。


ヒールを足に引っ掛けて、玄関の戸をあけた。

5月になったばかりの、まだ肌寒い空気は清々しく澄んでいて。
朝日が町を洗い流したように、とっても綺麗だった。


思い切り深呼吸をして、あたしはアパートの階段を駆け下りた。



このアパートから勤務先の会社までは、電車で一駅先の距離にある。
最寄の駅から近いってのも、ここを借りた理由のひとつ。





だけど、他にも選んだ理由があったりして……。