シュガー&スパイス


急に体が強張ってしまう。



あーもう。
なんてバカなの、あたし!


千秋なんて、千秋なんてただのお隣さんじゃない。


それに、今日だってたまたまチケットが余ってて……
あたしはたまたま誘われただけで。




「……菜帆?」

「……」





ずっと黙ってるあたしを見て、不思議そうに小首を傾げる千秋。


意識しだしたら、もうそこにしか目がいかないなんて……。


数ミリの距離を保ってる、あたしと彼の肢。

靴は、きっともうとっくに触れてしまってる。




ドクン

ドクン



なにしてんのよ、あたし。
どうしちゃったの?


こんな事で緊張しちゃってるのがバレたら、きっと笑われる!


あーもう!


さっさと足を動かしちゃえばいいのよッ
そうよ、意識しすぎてるからおかしいだけで、別に普通に足をずらせば。

ほら、ふつーに……。




「……ッ」