シュガー&スパイス




「ガキの頃の事なんて、そんなもんだよ」




その言葉にハッとして顔を上げると、千秋が真っ直ぐにあたしを見つめていた。



「……あはは。そうだよね、すっごくうろ覚えだし」



頭をポリポリ。
笑ってはみたものの……。

そんなあたしを見つめてまま、まるで射るような眼差しの千秋にドキッと心臓が跳ねた。



う……。




夜の遊園地。
その闇に溶けてしまいそうな、危うい千秋。

そして、あたしは彼の漆黒の瞳に呑み込まれてしまいそうだ。



ドキン

ドキン


なに、この感覚……。


ただ目が合ってるだけなのに……。
すべてを見透かされてしまいそうになる。


瞬きもゆるしてもらえない。




狭いゴンドラの中。
少しでも動けば、千秋の長い足に触れてしましそうになる。


今更、その事に気が付くなんて……。