毎日の生活に追われてて
こんなふうに景色を眺めるなんてことなかったな……。
七色に煌めく明かり。
なんだか“懐かしい”って感じてしまった。
「……ステンドガラス」
「え?」
ハッとして顔を上げると、千秋が首を傾げてあたしを見つめていた。
やだ、また声に出しちゃってたんだ。
「……菜帆?」
淡い光に照らされた千秋の瞳が、キラキラしてる。
その中に、引きこまれてしまいそうだ。
慌ててそこから顔を逸らすと、あたしは遠くのビル街をながめた。
「あ……昔ね? 子供の頃のこと、思い出しちゃって」
「……」
「通ってた幼稚園の周りに、小さな森があったの」
小さな声で、ポツリポツリと話すあたしの言葉を、千秋はただ黙って聞いていた。



