『昨日、話し忘れた事があってさ。 週末の予定だった挨拶、再来週の日曜でもいいかな? ちょっと急な予定が入っちゃって……』


言いにくそうに言った英司は、そう言ってあたしの反応を伺っているようだった。


ここで、あたしがダダをこねても仕方ないし。
急な予定ならそれこそ仕方ないよ。



「そうなんだ、大丈夫。 まだお父さん達に言ってなかったんだ」

『そっか。それならよかった』



あえて明るく言うと、安堵の溜息が聞こえ、本当に申し訳なさそうに英司は言った。


本当は、それ……うそ。

英司がうちに来るのはだいぶ前から話が出てて。
だから、あたし嬉しくてすぐにお母さんに言っちゃったんだ。

お父さんもお母さんも、すごく楽しみにしてたんだけど……。


がっかりするだろうな……。



『本当にごめんな?』

「うん。 ……あ、英司もう家出る?」

『朝飯食ったら出るよ』

「なら、一緒に行こ? いつもの場所で待ってて?」

『ん、わかった』



そう言って、電話を切るとあたしは携帯に視線を落とした。



あたし、本当にプロポーズされたんだ。




あの夢の王子様はいないけど

神様は
あたしと彼を出逢わせてくれた。