ドキン



う……!
なんて可愛く笑うんだ!

熱に浮かされて、こんなことに目が眩む。


千秋を見つめていると、ニコニコしたままの彼は少し間を開けて言った。




「……変な顔」

「……」



ムカ




な、なんですって!?
たった今、思ってた事撤回!

全然可愛くない!

可愛いわけないっ!




茫然としているあたしの事なんか、全然お構いなしの千秋。

さっさとあたしから距離をとると、自分の部屋の鍵を開ける。



ワナワナと震える手で鍵を開ける。
でも、熱のせいか怒りのせいか、なかなか開いてくれない。


もー、なんなのよぉ




「なんか困った事あったら呼んで。俺、家にいるから」

「へ?」




突然そう言われて、首を傾げた。


なに?



「体調悪いんでしょ? 無理しないよーに」

「……え」

「じゃね」

「あ、うん……」



パタン


呆気なくしまった扉。


あたしはしばらく、動き出す事が出来なかった。



……なんなの?