性懲りもなく、ジワリと涙が溢れる。

素直になれないもどかしさと、歯がゆさで、わけがわからない。


でもその時。
目の前ににゅっと腕が伸びてきて、そのまま少し強引に引き寄せられた。


瞬間香る、甘い、甘いムスクの香り。
それから……煙草のほろ苦い匂い。

あたしを包む千秋の香りに、目眩がした。



「ごめん。 でも俺、約束したろ?
きっと迎えに行くって」

「ん……」


甘ったるくて、まるで砂糖みたいな千秋の声は。
あたしの体をチョコレートみたいに溶かしてしまう。

心地良いと感じるのは、きっともう中毒だ。


彼の指が優しく頬を撫で、唇をなぞる。
その間、熱を帯びた視線が、まるで魔法のようにあたしから自由を奪う。


トクン

トクン


心臓の音とふたりの吐息。

愛おしそうに、そして慈しむように、そっと口づけをした。



「菜帆……愛してる」


キスの合間に、ふと千秋が零した。
最高のクリスマスプレゼントに、涙が溢れた。



「あたしも……。あたしも愛してる」



風に乗ってどこからともなくクリスマスの鈴の音が聞こえた。


それは、あの頃からあたし達を見守ってくれていたマリア様からの祝福の音のようだった。