そうつぶやいた直哉君は、哀しそうにその表情を歪ませた。
俯きがちに出てきた千秋を見た瞬間、胸がドクンとざわめきだす。
一番後ろで、ただじっと会話を聞いている千秋。
今朝と何も変わらないのに、まだ数時間だっていうのに、全然知らない人みたいだった。
「菜帆さん……お願いします」
「えっ」
壁からお店の方を見ていた直哉君は、あたしを振り返りながら言った。
お願いって……。
「兄さんを救ってください」
「……」
救う?
ここであたしが乱入して、千秋が救える?
ドクン ドクン
どうしよう……どうすれば……?
「―――そこで何をしてるんだ?直哉」
え……?
物陰に隠れたあたし達に向けられた、不審そうな声。
俯いていたあたし達は弾かれるように顔を上げた。
そこには……。



