「あの、千秋に……千秋さんに会いたいんです。会わせてもらえないでしょうか?」


ギュとスカートを握りしめた。

ダメでもなんでも、あたし負けないんだから!

その口ぶりは、もうケンカ腰かも。
失礼かもしれないけど、でもっ!


前のめりになりながらそう言ったあたしに、ミツルさんは静かに口を開いた。


「……。坊ちゃまはこちらにはいらっしゃいません。会社の方でございます」

「え……」



居場所、教えてくれないと思ってた……。

だから拍子抜け。


マヌケな顔をしてるあたしに、ミツルさんはさらに続ける。


「会社の中にある、割烹紫呉(かっぽうしぐれ)にて、ご両家のお顔合わせのお時間です。その後以前パーティを行った会場にて、皆様に正式に発表があるかと」

「……」


……顔合わせ……。
やっぱり、本当だったんだ……。

結婚するって……。


「早く行ってください」


……。



え?