――バタン


タクシーのドアが自動で閉まると、それだけでビクリと震えてしまった。


「……」


ゴクリ。


威圧感さえ漂う、純日本家屋。
目の前にして、この期におよんで足が竦む。

あたしなんかが来ていい場所じゃない。

そんなのわかってる。



でも。
でも……あたしは!


意を決してインターフォンを押した。



ドクドク


心臓が煽って、息が苦しい。
喉の渇きを感じて、ゴクリと唾を飲みこんだ。



『―――はい』


すぐに聞き覚えのある声が応えた。


「あ、あの。あたし……仲岡と言います。こちらに千秋、さんは……」

『……』


って、あたしなんかめちゃ不審者?

とにかく落ち着きたくて、タクシーの中で散々チェックした髪を、ササッとすいた。



しばらくの沈黙のあと、その声は思い出したように言った。


『仲岡様、お待ちください』

「……あ、はい」


大きな木製の開き扉。
その横の小さなドアがいきなり開いた。


「千秋坊ちゃまに御用でございますか?」


そう言ったのは、あのパーティの時にお世話になったミツルさんだ。

以前同様、キレイにセットされた黒髪が艶やかに光り、ミツルさんはあたしをまっすぐ捕えた。


……てことは、ここにいるのかな……千秋。