クリスマス。


それはあっという間に来た。

いつもと何も変わらないのに。
でも、その空気中に、ちょっとだけフワフワした何かが存在してる。

そんな感じだ。


鏡の前で、紅いルージュをひいた。

いつもはヌーディな色ばかりだけど、今日は特別だ。


寒くないように、ドレスの上にコートを羽織って玄関を出た。



と、その時だった。

すぐそばで扉が開く音で顔を上げる。


そこには。


「おっす」

「あ、千秋」


顔を上げると、ちょうど同じタイミングで部屋から出てきた千秋が、ジャラジャラと音のする鍵を、ガチャリと鍵穴に差し込んだところだった。

そんな彼は、いつもと違ってタイトなスーツに身を包んでいた。
たったそれだけの事なのに、なぜか胸がトクンと疼く。

それは、普段見慣れない姿のせいだろうか。

それとも……あたしの心の中で彼の存在がどんどん大きくなってるせいだから?