仕方ないよね、大事な事だもん。
直哉君は千秋に懐いてるっぽかったし、きっとあんなふうに千秋が言われてるの納得してないんだよね。

でも……今年は特別な日になるかと思ってただけに……。

残念……


「菜ー帆?」


いきなり目の前に、千秋の顔。
同じ目線になるように覗き込まれて、シャンプーの香りに包まれる。

不意打ちの事で慌てて身を引くと、さっき離れてしまった手が再び繋がれた。

目をパチパチさせていると、さらに距離を詰めた千秋がこっそり囁いた。


「おいで」

「えっ」


おいでって……。

そんな可愛い笑顔で言われましても……。


ギョッとして固まったあたし。
何も言わないのを、合意ととったのか、半ば引きずられるように連れ込まれた。



「ちょ、千秋っ」

「なに?」


な、なにって……



扉が閉まると同時にキスをされる。

壁に追い込まれて、すぐさまスカートの中に手が滑り込んできた。

一瞬ヒヤリとして、思わず声を上げそうになる。

でもそれは、すぐに暖かく、それを飛び越えてアツくなる。

パンストが器用に下ろされて、そのまま足を持ち上げられた。


千秋は時々こうして、まるで動物のように激しくあたしを抱く。
かと思えば、優しくたっぷり時間をかけて、深く深く味わわれる。


溢れて、抜け出せない。

苦しくて息が出来なくて、千秋に溺れる。


でもそれは、決して嫌じゃなくて。
たまらなく、愛おしいと感じてしまった。





久しぶりだからかな……。

もう、溶けちゃいそう……。


「……あっ……」


古い扉がガタっと軋む。

あたしは崩れないように、必死に千秋の首に手を回した。