手首を見て、それから見上げると、さっきと同様イラついてる様子の千秋。
アーモンドの猫目をグッと細めてあたしを睨んだ。


「アイツになに言われた?」

「え?」

「なんか言ってた?」

「……何も」

「……」


ジッと見据えられる。
それは疑いの眼差しだった。


ほんとになにも知らないってば。

だいたいなんであたし、疑われてるの?


カチンときて、負けじと睨み返すと先に折れたのは千秋の方だった。


「……はあ。だよな。ゴメン」

「いいけど。なんだったの?」


呆気なく離れていく手に、心のどこかで物足りなく感じながら聞いてみる。

聞く権利、あるよね?


「……いや。明後日さ、アイツ……直哉の代表就任式があんだよ」

「社長になるって事?」

「-そ。 直哉はそれに出席しろって言われてんだけどさぁ」


ああ、そっか。

いつか千秋の親戚の人に会った時の事を思い出す。


あんまりうまくいってないんだっけ……。


明後日かぁ……。

ジャラジャラと鍵を取り出して、ドアノブに差し込む千秋をぼんやりと眺める。


あれ? 明後日ってクリスマスじゃない?
そっか。だから誘われなかったんだ……。

そっかそっか。


なんて勝手に納得してみたりして。