髪を掻き上げ、あらわになったうなじにキスをされる。
「感じてんの?」
「ち、ちが……」
ガバッて顔を上げた瞬間、視界が反転する。
ギュッと手首を掴まれて、ベッドに押さえつけられた。
「菜帆……すげぇキレイ」
嬉しそうに、
愛おしむようにそう言った千秋。
ずるい……
そんな顔……。
「……ばか」
小さく小さく言った言葉は、薄暗い部屋の中に溶けてしまった。
軋むベッドのスプリング。
布の擦れる音。
混ざり合うふたつの吐息。
部屋に響く、艶かしい水音に気が変になりそうだ。
ねっとりした愛撫を受けながら、あたしは思い出していた。
あの、美容院での事。
少し荒れた長くて華奢な千秋の指。
彼のシャンプーはどこか艶かしくて、色っぽくて。
その指であたしに触れて欲しい。
そう思っていたことを。
その彼の指が、今まさにあたしを翻弄する。
そう考えただけで、登りつめそうになる。
「あッ……ん、ち……あき……」
あたしは無意識に『千秋、千秋』って何度も名前を呼んでいた。



