ギョッとして固まった千秋。

触れていた手は、いつの間にか離れてしまっていた。


「……」

「……」



のしかかる沈黙。


「……菜帆?」


手を伸ばせば触れられる距離なのに、離れてしまったあたし達。

そして、あたしを現実に引き戻す、千秋の低くて掠れた声。




あ……。


ボンって感じで一気に顔がアツくなる。

あ、あたし……なにやって……



「ご、ごめんっ!あたし間違えたっ?
アハハ、そ、そうだよねぇ、本当にあたしなんかがイイわけないよね。や、やだな……イタすぎる」


ほんと冗談を本気にするとかイタい子だよ。
バカ……あたしのバカー!

泣きそう。
自分のバカさ加減に泣きそうだよぉ

しどろもどろになって、そのままガバッと立ち上がった。



「アハハ、ハ。 あ、それじゃ、あたしはこれで……」






でも。
その瞬間、強く手を引かれ、千秋はあたしを抱き寄せた。