前髪の触れる距離。
少し顔を傾けた、伏し目がちの千秋の瞳が、ユラユラ揺れてる。

頬に触れ、耳たぶをかすめた手が、戸惑っているのが分かった。



……理由もわかるよ?

あたしが、続きを待ってるから。

そうでしょ?




「……あのさ」


ジトッて目を細めた千秋が、そのままの距離であたしを睨む。


「いつもみたいに拒否ってくんないと、俺困んだけど」


でも。
その時あたしは、間近で見る千秋の顔に今更ながら見入ってしまっていた。

きれいだなぁって。
乾いてあちこちに跳ねた髪。
真っ黒くて触ったら柔らかそう。

それに、きれいな肌。
弓形の眉
アーモンドの瞳

熟れた果実みたいな唇。


薄く開かれたその唇の向こう側で、白い歯が顔を覗かせた。


「……マジで続きいっちゃうよ?」

「いいよ?」

「――えっ」



……。

だって。


あたしが欲しいんだよね?千秋……。