わけが分からず固まっていると、意味深にフッと口元を緩めた千秋の指はいとも簡単に離れてしまった。


「???」

「クリーム」


千秋はニヤリと笑って、そのまま指をペロリと舐めた。


ドキン!

「あ、ありが、と……ハハ」


平然とそんな事をやってのけた千秋に、乾いた笑顔を返してオロオロと俯いた。


ううっ

なんなの?

またからかってる?
だったら、やめてほしい……。

千秋ってほんとよくわかんない。
こうしてあたしに触れてくるくせに、肝心なことには踏み込まない。


踏み込まないようにしてる?


どっちも、あたしの体には毒だ。


だって。
そんな彼の行動ひとつとっても、過剰に反応してるんだもん。


千秋の部屋にふたりきり。
真剣な顔して最後にはいつも冗談って笑う千秋に、うまく反応できる自信は今のとこない。


――ダメだ。

ほんとに帰ろう……。

空まわってる感が否めない……。



「……せっかくの誕生日なのに、プレゼント用意してなくてごめんね?」



テーブルの上に無造作に置かれている空き缶を集め、コンビニの袋に押し込見ながら言った。



「なにか欲しいものとかある?」



そう言って、千秋の家が超がつくお金持ちだったことを思い出す。



「あー……そんなたした物は用意できないかもだけど。せめて心だけは込めて……」

「アンタがいいな」


……ん?