オロオロ俯くと、「っはは」って溜息にも似た笑いが降ってきた。
チラリと見上げると、玄関に肩を預けて、コトリと首を傾げた千秋があたしを覗き込む。

トクン


「すげぇ嬉しい。あんがと、菜帆」

「……うん。あ、あとこれ。食べて?」



そう言って、さっき買ってきたものを差し出した。
それは。
コンビニで買った小さなケーキ。
こんなプレゼントでお世辞にも良いとは言えないけど、それでも今のあたしの精一杯だ。



掲げたコンビニ袋が、やけに重い。

まるで、ここだけ重力が集中してるみたい。
それはあながち間違ってない。

だって、千秋の視線がずっと注がれてる。
黙ったまま、あたしを見つめるその瞳は、いとも簡単に、あたしから自由を奪う。


やっぱり……迷惑だったかな……。
ウザかったかな……あたし。


でも、少しでも伝わってくれるといいなって。
そう思ったから……。


どれだけそうしていたんだろう。

息の仕方も忘れてしまいそうな、時間が流れ。

千秋が動く気配で、敏感にあたしは小さく飛び上がった。