「ゆ、友里香さん?」

「久しぶりね。あらやだぁ、菜帆ったら。顔がすっごく疲れてるよ?クマがある!」

「……ちょっと寝不足で」


この人はずけずけと……。
千秋のせいなんだってば!


「友里香さんこそどうしたんですか?佐伯さんですか?」

「え?あ、うんん、違うの。今日はお仕事で来てるのよ」


そうなんだ……。
友里香さんの勤務先も、ここから近いんだっけ。

でも、社長令嬢なのに、ちゃんと働いててえらいなぁ。



キレイな桜色のスーツに身を包んだ友里香さん。
ニコニコ微笑んでいて、真っ黒な髪は相変わらず彼女の動きに合わせてサラリと揺れた。

通り過ぎる人達が、こちらを振り返って行く。

社員は、この人が社長のご令嬢って事は知らないはず。
この人がそうです!って発表してるわけじゃないし。


でも、皆が振り返るのは、この人にはなにか特別なオーラを感じるからだ。


「ね、ね、もうすぐお昼でしょ?一緒にランチしない?」

「え、はい……構いませんけど」

「そう!よかった。じゃあ倫子ちゃんも一緒に」


嬉しそうに頬をピンク色に染めて友里香さんは、顔の前で両手を合わてフフフって笑った。