やっと仕事を終わらせた時には、時間は9時をまわっていた。

一階のロビーは、すでに照明が落とされていて、昼間の活気が嘘のようだった。



いそいそとビルの外へ出ると、バックの中から携帯を取り出した。

まだ英司から連絡はない。


そのままメールをうって、送信した。



「……よしっと」



バックに携帯を突っ込んで、そのまま駅に向かって歩く。


待ち合わせ場所は決まっていた。

お互い残業があって、予定が合わない日は今日が初めてってわけじゃない。



駅の近くのイタリアンのお店が、あたし達の“いつもの場所”。



今日も軽く食事をして、それから英司のマンションに行くんだろう。



そう思うと、胸が弾んで自然と足取りも軽くなった。