11月にもなると、ビルの間を吹き抜ける風はいっそう秋の色を濃くしていた。
オフィスから見える狭い空は、淡い青を広げ、そこに漂う羊雲だけは、やたらのんびりと流れている。

穏やかな秋晴れ。

でも、あたしの心は穏やかじゃない。


「はあ……」


パソコンに向かう手を止めて時計を見た。
まだお昼までには少しある。

うーん……。

ギュッと目を閉じて、眉間をグリグリと回した。

最近、ちょっぴり寝不足なんだ。

原因は、もちろんアイツ。

思い出したら、また腹が立ってきた!



昨日も、その前も。
隣の部屋の千秋くんは、一向に帰った気配がない。

その前なんて、アパートの階段の踊り場でショートカットの美人と一緒にいるところを目撃してる。

あの子?

あの子となにかあったの?


ああ、もう!モヤモヤする~!



「、……おい、仲岡!会議室にコーヒー3つ淹れてくれ」



やば。


「はいっ」


部長が鬼の形相であたしを睨んでる。
慌てて立ち上がり、給湯室へ急いだ。