シュガー&スパイス


1人暮らし向きの狭い1LDK。
そこに3人はちょっと窮屈だ。


諦めたようにワインを受け取る千秋は、視線はグラスに置いたまま言った。



「いつから友里香とこんな仲になったの?」

「……あたしにもさっぱり」

「パジャマパーティって、なに?」

「……よくわかんない」



ひたすら首を捻るあたしを見て、はあっとため息をついた千秋は、注がれたワインを口にした。

いつの間にかキッチンにいた男の人はいなくなって、友里香さんのさっきの勢いもなくなっていて。
はしゃいでいた友里香さんも静かにグラスを傾けていた。


ほんのりピンクに染まった頬。
流れるような黒い髪を横に流して、友里香さんは妙な色気を放っている。


キレイな人……。


その友里香さんのクルンとカールした睫が上下するたび、ふるふる揺れるさまをボーっと眺める。

と、その時。
伏し目がちだった友里香さんの瞳が、ふいにあたしを捕えた。



「いいなぁ、菜帆は」

「……はい?」


“菜帆”って、呼び捨て……。
友里香さんの口から聞きなれない言葉に、あたしは落ち着かない気分になる。
とっさにキレイに並べられたチーズに手を伸ばした。


隣ではベッドを背もたれにした千秋が、斜め後ろから様子をうかがっている。



「千秋と隣同士って事は、いつでも一緒にいれるわけでしょ?」



え?

いやいや。
そう言うわけでは……。

だいたい、あたし達そんな関係じゃないし。
旅行に行った日の夜、千秋にキスされたことを嫌でも思い出す。

ボンッといきなり顔が火照った気がして、あたしは俯いた。
急に左隣が気になってしまう。