シュガー&スパイス










「……なにコレ」



玄関のドアを開けるなり、千秋は目を丸くした。
仕事終わりに、ここに寄るように連絡しておいたんだ。



「ああ~!やっと帰ってきたっ、ホラ。千秋もこっち来て一緒に飲みましょう」

「は?」

「見てわかるでしょ?わたしと菜帆でパジャマパーティ~」


ほんと、やっと来たよぉ……
ひとりでこの人の相手は荷が重い……


友里香さんに腕を引っ張られ、バランスを崩しながら千秋はあたしに目配せする。

苦笑いしか返せない。


「っはは。パジャマ?」


千秋はおかしそう小さく笑ってそう言った。
……笑えないし。



あたしは、見慣れた自分のキッチンに視線を投げた。
そこには、やたら難いの良い大柄の男の人が、色とりどりの食材を使って調理をしていた。


なんか自分の家じゃないみたい……。

目の前には、まるでお店で出てくるようなフランス料理。

ただぽかんとその様子を眺めているあたしに、友里香さんは次々とアルコールをよこした。

うう、ワインそんなに好きじゃないんですけどぉ。


「ほらほら!千秋も座って」


友里香さんに半ば強引にあたしの隣に座らせられた千秋。

グイグイ押され、その勢いで千秋の体が押し付けられる。

完全に酔っぱらった友里香さんは、上機嫌で千秋に向かってワインを差し出した。


トクトクと注がれる赤いワイン。


あたしはそれを、すでに4杯飲み干していた。