それからチラッとあたしを見上げると、ちょいちょいと手招きをした。





さっきのさっきで緊張するんですけど。

どぎまぎしてると、千秋はそっとあたしの手首を掴んだ。


「……あのさ」

「ん?」


ボソッと言って、また黙る。
なんだかいつもの千秋らしくない。

言葉の続きを待っていると、掴まれてる手に力がこもった。


「友里香には気をつけろよ」

「友里香さん?」


いきなり他の女の人の名前が出て、思わずおうむ返しした。

キョトンとしたあたしを真っ直ぐ見つめると、千秋は少しだけ眉をひそめた。

そして、千秋からとんでもない言葉が飛び出した。


「もしかしたら、友里香……結婚したくないのかもしれない」


え?

そ、それって……。


「制約結婚だって、言ってた」

「英司との結婚が……?だって、あんなに幸せそうなのに」

「さっき。俺、友里香といたんだ。菜帆が危ない目にあってる時に」


ドクン

まさかって思った。

けど、千秋は迷いのない瞳で、あたしを射抜く。

それからさらに続けた。


「菜帆を襲わせたのもたぶん友里香。変だと思ったんだ。ずっと引き止められててたから。んで、慌てて戻ったら、こんな事になってた」

「そ……そんな……でも、なんであたしを……」


そこまで言って、思わず黙った。


だって、だって思い当たることあるんだもん。