まだ30代の彼は、色黒で実年齢よりももっと若く見える。
実は、女子社員の中で人気のある人。

いまだ独身。

すっごくやり手。
仕事でも、もちろんプライベートでも。



ひぇー!

よ、吉田部長!




「……ん? なんだ、仲岡。 まだその書類届けてないのか」

「え、あ……ハイ。 あの……今から」

「待ってるぞ。 走れ」




彼は大きな瞳をスッと細めると、あたしの頭をポンッと弾いた。



「うッ は、はい」



ちょっと……うんん。

かなりS気のある彼はイジワルそうにニヤリとして、あたしと英司を見た。






「おー、佐伯。 この前のマーケティング、良かったそうじゃないか。 評判いいぞぉ」

「いえ、僕なんか。 チームのおかげです」

「謙虚なヤツだなあ。 もっといばれ!」




豪快に「ハハハ」と笑って、吉田部長はバシバシと英司の背中を叩く。
そして、真剣な表情で持っていた手帳に視線を落とした。




よ、よかった……。
英司がやめてくれてて……。

もしあのまましてたら……。


そう考えただけで、思わず背筋が凍る。