――あの時。
英司が助けに来てくれた時……。

あたし勝手に思ったの、来てくれた。

千秋が来てくれたって。



でも、本当にあたしを助けてくれたのは、英司で。
英司があたしを抱きしめたりするから、わけわかんなくなって。

色んなことが、頭の中でごちゃ混ぜになってる。


「でも千秋こそどこに行ってたの?すぐ戻るって言って、全然帰ってこないんだもんなぁ」

「……」

「あ、もしかして友里香さんに捕まってたりして」


止まれ、あたし。
これ以上何を言うつもり?


「英司も友里香さんが婚約者なんてきっと鼻が高いよね」


もういいよ、今日は口を閉じて、さっさと眠ればいい。
明日には東京に戻らなくちゃいけないのに。


少しだけ開いた窓から、生ぬるい風が吹き込んでくる。

電気もつけていない部屋は、月から降り注ぐ青白い光で包まれていた。


「この別荘もすごすぎる。住む世界が違うってこのことだよね。
だから罰があたったのかな。あたしがこんな世界に足を踏み入れたりしたから」


止まってあたしの口。