シュガー&スパイス

ガバッと顔を上げると、ニヤリと笑った千秋と目が合った。

ま、またあたしをからかってる!

ムッとして、思い切りその目を睨みあげた。

でも千秋は。


「やめろよ、俺を誘惑すんのは」

「なっ……な、なな……」



なに言って……。

ポカーンとしてあんぐり開いた口をどうする事も出来ずにいると、千秋はやっと体を起こしてあたしとの距離を開けた。

それを目で追っていると、視線だけを落として不敵な笑みを浮かべる。


「油断すんなよ。一瞬でも隙みせたらすぐオオカミに変身すっから」


は?

なに言っちゃってんの、この人。
わけわかんない……。

さらにポカーン。

思考回路は完全について行けないのに、体だけはどんどん熱くなる。


無言のあたしを残して千秋はビールを飲み干すと「飲み過ぎんなよ」って念押ししてどこかへ行ってしまった。



その背中を目で追いながら、手にはすっかりぬるくなったビール。
ハッとしてブルブルと頭を振って、それを飲み干した。


う……まず。

顔をしかめていると、後ろから不穏な気配が……。