海から上がったあたし達は、別荘へ戻った。
そこでようやく友里香さんに解放される。


「お腹すいたねぇ、あ。そう言えばご飯どうするんだっけ?」



大きな鏡の前で化粧を直しながら倫子が振り返った。


時計に目をやると、17時を回ろうとしてる。
大きな窓から見えるオレンジ色の空と海。

それは誰が見ても心を奪われるサンセット。

だけど、あたしはそれどころではない。


―――だって。


「……バーベキューやるから一緒にって」

「最初の話と違うね。なに考えてるんだろうね、あの社長令嬢」


大丈夫?って視線を受けながら、あたしは大きくため息を零す。


結局、ずっと一緒に過ごしているあたし達。

この泊まる場所を提供してくれるだけで充分だったんだけど、千秋も誘われていた時点で不審に思うべきだった。
でも、わからなかったんだもん。
飛行機で、いきなり隣に座った千秋を見るまでは。


はあ。

何度目かの溜息をついて、鏡の中の自分を見た。


日焼け止めを塗っていたものの、すこしだけ日に焼けた肌。
そっと頬に触れると、ジリジリと熱が伝わってきた。