サンゴ礁の海から、千秋が真っ直ぐに手を伸ばす。

真っ黒な髪が、太陽に照らされて、キラキラ眩しくて、思わず目を細めた。




千秋……。



何でもない顔して、あたしを助けてくれる千秋。



ほら、沈みかけてた心が満ちてくる。

水の底で酸素をもらえたみたいに、やっと息が出来る。



あたし、あたし……



前に進んでもいいよね?



この笑顔に、甘えていいんだよね?





そっと千秋の手を取りながら、あたしはそんなことを考えていた。








バシャーン!



「つめたっ」




船の上はジリジリ焼けるように暑かったのに、海の中はやっぱり冷たくて。
火照った体を冷やしてくれた。