シュガー&スパイス



そう。


平気。



わかったの。

今朝ふたりが一緒にいるところを見たから、じゃない。


もっと前……。
あの、カフェでふたりを見た時も、全然平気な自分がいて驚いた。



きっとこれは……。

あなたのおかげ。


あなたが、傍にいてくれるから。



辛い時。
悲しい時。

沈んでいくあたしの心を拾い上げるみたいに千秋がいた。


『なにしてんの』って笑って。
それから、あたしを笑わせてくれた。


涙がこぼれないように。

真っ黒なとこから救い上げてくれた。

まるで王子様みたいに。



そりゃ最初は、ナンパなヤツだし調子よくて、馴れ馴れしくて。
嫌なヤツって思ってた。

でも

いつの間にか千秋のペースになってて

それも心地よくなって。
楽しくて……

こーゆうのも悪くないって、そう思える。


そう、思うようになったの。





だからね?

あたし、もう大丈夫なんだ。







「なにそれ、なんのコト?」


そう言って、また水平線に視線を移した千秋は頬杖をついて、「あ、あそこにニモがいる」って楽しそうに笑った。


あどけなさが残る、その顔に。



ドキン



胸が疼く。




ジリジリと太陽の日差しに照らされて、肌が焼ける。
でも、暑いのはそれだけじゃない。

あたしの身体の奥が、熱い。


顔、熱い……。




これって……。

この気持ちって……。






「千秋…………」



持っていたペットボトルをギュッと握りしめた、その時だった。





「ほらほらっ、なにしてるのぉ?」