なんか……。
なんか冷や汗ッ!
なんでこんな状況になってるの?
そりゃ、友里香さんと英司が婚約したのは会社で知ったけど!
でも、せっかくのバケーションを、この微妙な空気にすることなくない?
膝の上に乗せていたバッグをギュッと握りしめた。
と、その時。
この恐ろしいメンツを揃えた張本人が、やっと到着した。
「あ、もう来てたんだ!長旅ご苦労様っ」
そう言って、なんとも爽やかな笑顔を浮かべる友里香さんは今日も真っ白なリゾートワンピを身にまとっていた。
真っ黒で艶やかな髪を揺らし、エレガントな広つば帽子を被っている。
キレイ……。
長身の彼女には、まさにぴったりの恰好に、思わず見惚れてしまった。
「菜帆ちゃんに、倫子ちゃんもよく来てくれたわね?それに千秋も」
友里香さんは順番にあたし達の顔をみて、最後に千秋に笑いかけた。
でも千秋と言えば、ムスッとして友里香さんの顔をちらっと見ただけでウンザリしたようにため息をついた。
でも友里香さんはそんな千秋に目もくれず、ふふっと楽しそうに笑うと「楽しんでね」と言ってさっさと奥へ行ってしまった。
茫然とその後姿を見送るあたし達。
それから英司も彼女の後を追って行ってしまった。



