見ると、千秋が手を差し出したまま、少し腰をかがめる。
「菜帆、踊ろ?」
上目づかいで覗きこまれ、心臓がドキンと跳ねる。
「む、無理だよ、あたし踊れない」
「大丈夫だよ」
「だって、足踏んじゃうよ」
「へーきへーき。俺、うまく避けるし」
ええ?
そういう問題?
「ほら!」
「わっ」
半ば強引に手をひかれ、それと同時に腰も引き寄せられる。
いきなり近づいた距離に、またまた心臓が跳ねた。
ち、近いってば!
前髪が触れそうで、身を引くと、強くて自然な力で引き戻される。
まるで少年のように、純粋に楽しんでるその笑顔に、目がくらむ。
足も全然踏みそうにならないから、きっと千秋がうまくリードしてくれてるんだってわかる。
さっき、踊れないって言ってなかった?
それとも、上手な人は、もっと違うのかな……。
微かに聞こえる音楽に、楽しそうな千秋の弾む吐息。
そんなあたし達を、ステンドカラスから差し込む七色の光のスポットライトが照らす。
酔いそう……。
このまま、酔っちゃいそうだよ……。
あたし、変だ……。
だって。
だって……
千秋がキラキラして見えるもん。
神聖な教会の中
光る粒子が、千秋を包んでる。
「……」
そして、いつの間にか音楽は聞こえなくなり……。
あたし達の足も、とまっていた。



