「懐かしいなー」
「え?」
きょとんとして見上げると、千秋は楽しそうに笑った。
「ガキの頃はさ。ここによく来てたんだ」
「え?」
そう言って肩をすくめると、千秋はズルズルと腰を落とす。
そのまま首を背もたれにもたげて、ステンドガラスを見つめるその瞳は、遥か昔を思い出してるようだった。
「聞いたろ? 俺、今の家族と血の繋がりないって」
「……うん」
「あれさ、ホント。
俺が産まれる前に親父が死んで、お袋は今の親父と再婚。
でも、再婚して、直哉が産まれてすぐ
お袋が病気になって、よく入退院繰り返してた時期があったんだ」
そう語る千秋の言葉は、まるで夢物語を聞いてるようで
水が流れるように、あたしの中に入ってきた。
「その頃かなー
ひとりでよくここに来て、『お母さんの病気を治して』ってお願いしてたんだ。
俺のお祈りもむなしく、それから1カ月くらいで死んじゃって。
ああ、神様なんていないって、すっげ思ってた」
……千秋……。



