「なんだよ、逃げるのか?」
……む。
あんな事言ってる!
彼らは、千秋が言い返さないのをいいことに、言いたい放題。
「6年前に家を出たくせに、ほんと図々しいヤツ」
家を出た?
自立したって事?
それとも、家出?
イライラ
「俺なら絶対無理。並んで歩くのもごめんだ」
イライラ
イライラ
「はは。 アイツは一族の恥だ」
……プチン!
「ちょっと!!
黙って聞いてればさっきから言いたい放題!なによっっ」
グワッと振りかぶって、気がついた時にはもう、そう叫んでた。
その場の空気がピリッと固まった、気がした。
今まで散々減らず口を叩いていた彼らも、目を丸くしている。
でも、我慢できないっ
「……確かに、千秋はチャラくて、口もうまくて、あたし流されてるけど!
でも、それだけじゃない!お金なんかじゃない!」
そこまで言って、大きく息をつく。
ここに入る前、千秋が言ってた事は、この事だったんだ……。
みんなが、こういう事わかってて
あたしも同じように言われるのわかってて、
それであんな事言ったんだ……。
『ごめん』って。
「……家のお金だか何だか知らないけど、千秋は毎日遅くまで仕事して、ちゃんと地に足つけて堅実に働いてるわよ!
それを知らないで言いたい放題……。
それにね!
他人を気遣えないあんた達の方が、よっぽど恥ずかしいんだから!
金持ちだからなにっ!!?
お金なんかなくたって、人として幸せな事なんて
この世の中もっとたくさんあるんだからね!」
はあっ はあっ
一気に言ったもんだから、息が上がってしまった。
シンと、静まりかえる会場内。
今、周りにいた人だけじゃない。
この会場に来てる、全員があたしに注目していた。
や……
…………やっちゃった!!!!!!