「いいな、千秋は。可愛い彼女が一緒で。
あたしなんか、今日誘っても断られちゃった」


え?


「それじゃ、またね」



そう言って、ヒラヒラと手を振って去っていく彼女の背中を見つめたまま、首をひねる。



断られたって……。

まさか……。



「あの人、昔から苦手なんだよな。なんかやたら俺を子供扱いしててさ」

「……」

「結婚決まったらしいけど、今日は一緒じゃないんだ」



や、やっぱり……。

友里香さんのお誘いを断って、英司は今頃あのイタリアンのお店に向かってるだろう。


どういうつもり?

英司、何してんのよ……。



ギュッと携帯の入ったバッグを胸に押し込めた。




「菜帆、来て」



わっ

いきなり千秋に肩を抱かれて、ビクっと体が強張る。


え、ちょ、なに?



グイグイとエスコートされ、そして、たどり着いたのは、篠宮一族が集まる壇上の上。


あたしは、その親族達と一緒に一列に並ばされ、広い会場内に来ていた、たくさんの人たちと向かい合っていた。


なにが始まるの……?

緊張をほぐそうと、体が勝手にゴクリと生唾を飲み込んだ。




ううっ


こんなにたくさんの人の前に立ったの、卒業式ぶりなんですけどー!