あたし何考えてんだろ。
てゆか、英司も何言っちゃってんのよ!

そりゃ、そりゃあ、あたしだって……。


……あれ、最近英司としたのっていつだっけ?
昨日はそれどころじゃなかったし……。



パクパクとまるで金魚みたいになってるあたし。

そんなあたしを見て、英司は目を細めると


「菜帆ってほんとわかりやすいね。 嘘つけないよな」

「へ?」


愛おしそうにそう言われ、なんだかむず痒い。



「今夜、食事でも行こう。 その後はもちろん、俺にくれるよね?」



英司はそう言うと、時計を確認して「そろそろ行こう」って先に歩き出した。




「……」





ドキン

ドキン


『俺にくれるよね』って……。
英司ってば……そう言う恥ずかしいセリフを簡単に言っちゃうんだから。
でも、それが全然さまになってるから不思議だった。



「菜帆?」



いつまでも立ち止まっているあたしに、英司が振り返った。


他の誰にも見せないその笑顔に、胸が疼く。
あたしは、小さく笑みを返すと英司の背中を追って、会社への道を急いだ。