――日曜日


その日はあっという間に来た。



窓から吹き込む風が、ムッとした夏の熱気を連れてきた。

朝早くから聞こえる蝉の声が少し煩わしい。




時計を見る。


まだ14時かあ……。


約束の18時までは時間はあるけど、ちょっと出かけよっかな。







「わあ、暑いー……」



外へ出ると、8月の太陽が、容赦なくあたしの肌を焼く。

少しためらいながら、あたしは駅へ向かって歩き出した。





と、ちょうどその時。


聞き覚えのある声が、耳に飛び込んできた。



「はあ? なんでだよ、話しが違うだろ」




えっ

この声……。




それはアパートを出た先。
青々と若葉を茂らせてる、金木犀の木の方から。




「え、ちょ……勝手に決めんなって、……おいっ」




そろーりと、静かに覗いてみる。

すると、携帯を握りしめて、ものすごい怖い顔をしている……。




「千秋?」




つぶやいたあたしの声に顔を上げた千秋は、さらに不機嫌そうにその表情を歪めた。



ひっ



「――聞いてたな?」


「た、たまたまだよっ!
わざと聞きたくて聞いてたんじゃ……」



ジリジリとにじり寄る千秋の顔が、意地悪なものに変わっていく。




「ご、ごめんなさいい」




あまりの迫力に、思わず謝っちゃったりして。


そして、目の前まで来た千秋が、勢いよくあたしの手首を掴んだ。



ひえっ



「丁度いいわ。 ちょっと付き合って」

「へっ」




困る!

あたし、用があるんだって!



青ざめてフルフル首を振るあたしに、千秋が一言。



「こないだの借り。これで無しにしてやる」



ずっ
ずるい~~!