振り向くと、仕事終わりの千秋の姿。
「よっす。また一緒になった」
って笑った顔に、安心した自分がいて。
そんな自分にまた、驚いた。
「帰り? なら一緒に行こ。
……って、うわ。なんて顔してんの?」
今度はビクビクと怯えたように、千秋は目を細める。
へっ
なんて顔って、どんな顔?
「また泣いてた?
あ、仕事でミスって絞られたんだろー。菜帆ってドジだから」
「……違うし」
この人もあたしをからかってんの?
人の顔見て、勝手にビビって、あげく今度は爆笑?
ひど……。
もうやだ……ほんとに泣きたい……。
「……え、あれ? 菜帆?」
急にうなだれたあたしに驚いて、千秋は慌てて顔を覗き込む。
それは、まるで悪戯がバレて叱られた子供のようだ。
「ごめん。 俺、無神経」
ほんと。
無神経すぎ。
でも、焦る千秋見て、なんか元気でた。
「…………缶ビール」
「ん?」
「缶ビール1本で許してあげる」
だから、今日はよしとする。
「っはは。 仰せのままに。姫」
そう言った千秋は楽しそうに笑って、お辞儀をして見せた。



