うっとたじろいだあたしに
さらに一歩距離を詰めると倫子が顔を寄せた。


瞬間、甘い蜂蜜みたいな香りに包まれる。



えっ 倫子、なに?



ちょっと!

そのグロスでキラキラしてる唇とかやたら色っぽいんですけど!

女のあたしでも、なぜかドキドキしてきちゃう。



こんなに可愛いのに、なんで倫子には彼がいないんだろ……。

そんなことを考えてしまう。



ジっとあたしの顔色を伺うように倫子に見つめられて、あたしはパチパチと何度も瞬きを繰り返す。




「その傷はぁ、もう癒えてたりして?」

「え?」




……癒えてる?

うんん、癒えてないよ。


だって、英司の事大好きだったし。
ちゃんと理由聞けてないのに、フラれた理由悟っちゃったし。



だから、あたしまだ全然立ち直れて……な……



「“お隣の千秋くん”」

「はいっ?」



ちち、千秋?

なんでそこで千秋っ!?