「はあ……」



いつもの給湯室で、今日何度目かのため息をついた。


コーヒーから上がる湯気を見て「はあ」とまたひとつ。




「……ため息つくと、そのぶん幸せが逃げるって知ってる?」

「!」




ぼーっとしてたところにいきなり声をかけられて、びくっと体が強張ってしまう。
振り向くと、倫子が口の端をニヤリと上げてあたしを覗きこんだ。




「ほら、吸ってごらん?スーって」

「スー……」




……って、吸えば零れた幸せ戻ってくる?

言われるままに息を吸って、そこでハッとした。



「そうじゃなくって。 ほんとに困ってんだってばぁ」

「あは。ごめん。……で、どうなの?その後」



倫子は、あたしの隣に並ぶと、コーヒーカップを幾つか用意する。

その様を見ながら、あたしは一瞬言葉に詰まった。



“その後”ってゆーのは実は
英司の事。