ニヤリと笑った母の視線の先を追う。


そこには、キョトンとした千秋がいて。




ひッ!
わ、忘れてた!




いきなり母の興味が自分に向いた事に、驚いたように何度も瞬きを繰り返してる。



「あー……えと、この人はね?」

「菜帆の母です。この子がいつもお世話になってます」



あたしが説明するよりも先に、お母さんはササッと千秋に歩み寄ってニコリと笑顔を浮かべた。



「――あ、はじめまして。篠宮千秋です。 僕の方こそ、いつも菜帆さんにはお世話になってます」




少しだけ首を横にもたげて爽やかに笑って見せた千秋に、なぜか母の顔が輝いた。




「まあ、菜帆にはもったいないよーな人!
お父さん、貴方達が来るの、ずっと楽しみに待ってるのよ? 来週には帰ってくるんでしょ?」


「え?」
「え?」




一瞬理解できなくて、固まったあたし達。

そんなあたしと千秋を交互に見ながら、お母さんは思いついたように背を向けて歩きだした。



「あら、あたしったら!こんなことでする話じゃないわね。帰ってからゆっくり聞くから。ほら、行きましょ」

「……」




はっ!

え、ちょ……


やっと我に返って、慌てて後を追う。



「……お、お母さん、ちがッ……」

「ぶはッ」



へ?

振り向くと、口元に手を当てて体をくの字に折り曲げた千秋が心底おかしそうに笑ってて。



「……なにがおかしいの?千秋も追いかけて!」

「っははは。 ご、ごめ……さすが、菜帆のかーちゃん」

「…………」



恥ずかしい……。