「はぁ……お腹いっぱい。もんじゃなんて久しぶり」


お店を出ると、あたしはお腹をさすりながらため息をついた。



「俺より食ってたもんね。 すげぇ」

「だってすっごく美味しかったんだもん」



そう言ったあたしを見て、「だろ?」って笑う千秋にコクリとうなづいて笑顔を返した。


と、その時だった。



「あら、菜帆? 菜帆よね?」



再び背後から呼び止められた。

クルッと振り返ると、馴染みの顔が見えて驚いた。



「おかーさんっ!」






な、なんでお母さんが、ここに……え?


手に大きなボストンバッグをぶら下げた健康そうな母が、小走りに歩み寄った。




「ど、どうしたの? こんなとこで……なにしてんの?」

「なーに言ってんの! 菜帆に会いに来たに決まってるでしょ」

「ええっ。なんで突然」

「いーの、いーの。 突然だってなんだって」




よ、よくないでしょ!

アッハッハッハ!なんて豪快に笑う母を前に茫然と立ち尽くしてしまう。
だって、うちってここから片道5時間はかかるんだよ?

連絡もなしに来て、あたしが居なかったらとか考えないの!?




口をだらしなく開けたまま、ポカーンとしてるあたしなんかお構いなしで、お母さんはツツツと視線を上げた。




「……もしかして、この方が?」

「へ?」