「…ねぇ、そろそろヤバくない?」




「は?


何 言ってんの?


こいつ まだ、動けそうじゃん」






「そうじゃなくて…




…アレ。


警察 呼ばれたら、ヤバくね?」




1人の女の子が何かに気付いて、

その方向を顎で指しながら、小声で言った。


その様子で、

誰かが こっちを見てるのかもしれない…って、思った。




でも…。


仮に人が居たと しても、

夜だから当然 顔は見えないだろうし、

何を してるか までは、分からないだろう。


それに、

さっき女の子は″まだ動けそう″って言ってた けれど、

実際あたしには、助けを呼ぶ力も、もう残ってなかった。








「…って言うか、あれ…!」




「…ヤバい、逃げるよ!」




急に女の子達が また何かに気付いて、

慌てて逃げ出した。






―……?―




何が起こったのか分からないまま、

その場に座り込んで、女の子達の逃げ帰る姿を見送って居ると、

あたしは突然、誰かに すごく すごく優しく、抱き締められた。




ちょっと あたしに触るのを躊躇うみたいに、

でも すごく心配してくれてるのが伝わって来るような、

温かくて優しくて……。


それは″抱き締められてる″と言うよりも、

まるで包まれている みたいな感覚だった。