もやもや した気持ちを抱えたまま夜は更けて、

眠れない あたしは、

かず兄が寝ているのを確認して、病院を抜け出した。




時々 車は通るけれど、

都会とは ほど遠い この街は、静まり返っている。


気分が少しでも晴れたら、かず兄の病室に戻ろうと決めて、

あたしは冷たい空気を胸いっぱいに吸い込むと、当ても無く歩き始めた。




…だけれど。


歩いても歩いても、

風に当たっても、何をしても、

気持ちは晴れるどころか、

むしろ どんどん気が狂いそうな程に、曇っていった。






―……………―




そして、

あまりの胸苦しさに

わぁーっと頭を掻きむしりたい衝動に襲われた時、

あたしを慰めて欲しいと、頭に浮かんだのは………。




頼りたかったのは、

優しく笑って、頭を ぽんぽん って して欲しかったのは、

やっぱり……。




………貴、だった。