「…宗谷くん…、」




「じゃあ 俺、帰るから」




和が声を出したのと、貴史が そう言ったのは、

ほぼ同時だった。


しかし、和が何か言い掛けた事に気付いて、

貴史は、また少し困ったような顔で笑って、言った。






「″また″…、ね」






そこに どんな意味が含まれていたのかは分からなかったが、

和は、ここで止めなかったら、

貴史に二度と会えないのではないか という気さえ、した。






「…宗谷くん!」






「ん、何ー?」






「……あの…、……」




止めては みたものの、

何と言ったら良いか分からずに、和は沈黙した。


貴史は立ち止まったまま、和の次の言葉を待ってくれていた。






「…あの、………


………宗谷くん、

約束、してくれた…よね…?」




暫くして、

和の中の最大限の勇気を振り絞って そう言うと、


「…したねー 笑」


と、笑いながら貴史が言った。




…和が何を言いたかったのか、それすらも分かるようで、

″何が″と言わずに、そう返してくれた。