「和ちゃん、

今日 私と宗谷くんが二人で居るのを見て誤解しちゃったと思うんだけど…、

私と宗谷くんは、…ただの友達なんだ」




「…友達…?


え、でも…」




凛と貴史が友達だなんて話は、聞いた事が なかった。


それに友達だったら今まで黙っている必要も無かった筈なのにと、

和は思わず凛の話に反論し掛かった。






「…実はね、」




しかし そんな和の声の上に凛の声が重なって、

和は慌てて、言おうと していた言葉を、引っ込めた。






「…私、中学校の時、ピアノ習ってたでしょ」




「…う、うん」




引っ込めた言葉を飲み込みながら、

そう言えば そうだった と、思い出しながら答える。






「そのピアノ教室の先生に、この前 街で偶然 会ったの」




「…うん」




その話が貴史と友達になる話と、どう繋がるのか読めないまま、

和は ただ、頷いた。






「…で、しばらく先生と立ち話してたら、

先生の息子さんが今 入院してるっ て事が分かって…、


私、今度お見舞いに行きます って言ったの。


…それが、あの病院なんだけど」




「…うん」






「先生の息子さんとはピアノ教室で ちょくちょく顔 合わせてたし、

お見舞い行くって言ったら先生が凄く喜んでくれたから、

それから暫くして、ほんとに お見舞いに行ったんだ。


…そしたら…、そこで偶然 宗谷くんと会ったの。


…会ったって言うか…

私が病室に入ろう とした時に、

中から宗谷くんの声が聴こえて来たって感じで」




「うん…」






「もちろん最初は、誰かなんて分からなかったの。


ただ″誰か居るんだ″って思って、入るの躊躇ってたら…、

急に宗谷くんが出て来て…」