凛は あれから暫く その場で立ち尽くして…

ようやく家に向かって歩き出した頃に、和から電話が掛かって来たらしい。


病院の近くのカフェを待ち合わせ場所に指定して、″中で話そう″と言った。


そこに向かうのが まだ少し怖いと思う気持ちは残っていたが、

和は了承して電話を切った。


ただ、待ち合わせ場所に着くまでの時間で気持ちを落ち着けて、

凛とは笑顔で会いたい、と思った。




しかし そんな事を考えながら歩いて居ると、時間は あっと言う間で、

気付いたら和は、約束の お店に着いていた。


気持ちの整理が ついているのか いないのか、

自分でも よく分からないまま、恐る恐る店内に足を踏み入れると、

和に気付いた凛が、優しく笑いながら手を振って、合図した。


凛にも辛い気持ちは あったと思うのだが、

それでも凛が笑ってくれたから、

和は自分も笑って話せるような気が、した。






「…ごめんね」




開口 一番 謝って、

和は凛の向かい側に座った。






「ううん。


…和ちゃんが話を聞いてくれる気に なって、よかった…」




凛は少し泣きそうな顔で、

ほっと したように また、笑った。




正直な所、

聞きたくない気持ちの方が まだ、上回っていたかも…しれない。


しかし和は その事を悟られないように、

凛を見て、静かに頷いた。




そんな和を見て、聞く体勢が整ったと思ったのだろう…、

凛は一呼吸 置くと、話し始めた。