「…和ちゃん♪」
もう誰も追って来ないと気を抜いていた和は、
声を掛けられるまで、蓮の気配に気付かなかった。
「…せ、先輩っ!?」
「どーしたの、
和ちゃんが全然 気付かないなんて 笑」
明るく笑って、蓮が言った。
蓮と話すのは久し振りだったが、
その態度は以前と何ら変わりは なく、
和に優しい…安心感を与えた。
「だって先輩、いきなり来るから…。
…でも、どうして、こんな所に…」
話しているうちに疑問に思い、和が そう訊くと、
蓮は先程まで和が居た病院の方向を、指差した。
「…あそこ。
あの病院に、用が あって…さ」
「…え…?」
「そしたら 和ちゃんを見掛けたんだけど…
ほら、あんな事が あった後だったからさ(笑)、
話し掛けられなかったんだよね~」
和に気を遣わせない為なのだろう、
何でもない事のように笑って、蓮は言った。
「………………」
「そんで ずっと見てたらさー
和ちゃんが泣き出しそうに なってたから、
みんなに分かんないように、ストーカーしてきたのっ」
相変わらず跳ねるような、年上なのに″可愛い″と思ってしまうような口調で、
猫が すり寄って来るような目で、
蓮は和を覗き込んだ。
蓮 特有の あっけらかん とした、
柔らかくて あたたかいオーラを久し振りに感じて、
やはり蓮は、自分にとっての″太陽″なのだと、
和は頭の隅で、思った。