「…和ちゃん!」




とうとう追い付いた凛に、腕を掴まれた。


その瞬間、

我慢していた涙が、ぼろぼろ と 零れ落ちた。






「…離して…っ!」




気付くと和は、

凛に怒りを ぶつけるように、叫んでいた。






「和ちゃん、待って!


…話を、聞いて…!」




慌てて叫ぶ凛に、

ますます怒りが込み上げて来る。






「…何で…、凛ちゃんなのっ!?」




泣きながら、心の中の怒りを そのまま凛に ぶつけると、

凛は焦ったように、同じ言葉を繰り返した。






「待って、誤解なの!


お願いだから…、話を聞いて!」




しかし その言葉は ますます、

和の神経を逆撫で するよう、だった。






「…………信じ、られない」




ぽつりと零れた言葉に、凛は悲しそうな顔をした。


…凛の傷付いた顔を見て、罪悪感がチラリと胸を掠めたが、

和は少し力の抜けた凛の指から自分の腕を引き抜いて、

再び走り始めた。


放心状態に なっていたのか、

凛は その場を動かなかった。






凛が全て悪いとは、

さすがに思っていない。


誤解だと言うのも、

もしかしたら本当なのかも しれない と、思う。


しかし それと同時に、

楽しそうな二人の様子も、

この目で確かに見た紛れも無い事実なのだと思うと、

複雑な気持ちだった。